文字組み
本文を組む際、書体、禁則やツメの設定を調整することにより、文章の意味がより読者の頭に入りやすくなることがある。原則とは異なった、デザインの書体や組版ルールをつくり、読者に組みの存在を意識させないのが、読みやすい組版なのだ。記号・約物、ルビなどの組版ルール、個性的な書体で読者を楽しませる工夫を紹介する。
記号・約物の調整
記号・約物には、「区切る記号」「言葉を括る記号」「文章の前後をつなぐ記号」などがあるが、それらはすべて文章を読みやすく、また、わかりやすくするために使われている。書体に従属するこれらの記号は、書体によっては、大きさや太さが、文字(漢字・かな)と揃っていないことがある。このときは、記号の大きさを変えたり、ウェイトを変える、アキをツメるなどの処理が必要だ。 記号や約物にも細心の注意を払ってデザインしないと、読者に違和感を与えることになる。たかが記号・約物と考えてはいけない。特に、タイトルや見出し、メインコピーのような「見せる要素」の強い箇所では、アキをツメて全体にまとまり感を出すのが一般的だ。 ※約物の種類は、前号参照。
「」(かぎかっこ)の種類
約物の種類と使い方
禁則処理
禁則とは、行頭や行末にふさわしくない約物や文字が配置されないように調整すること。「、」や「。」「}」「…」などが行頭にくると、約物本来の「区切る」「括る」「つなぐ」の機能から離れるので、ふさわしくない。また、「っ」や「ゅ」などの拗促音や、「ー」(音引き)も、好ましくないと考えられ、禁則の対象になっている。特に行頭に「ー」(音引き)がくると、横組の場合、書体によっては、漢数字の「一」にも見えるので注意が必要。 「(」などの起こしのかっこ類が行末にくることも禁止されている。「……」などのように同じものを2回続けて使う場合は、分割されないように処理する必要もある。
ルビの付け方
ルビとは、漢字や欧文にふられる読みがなのこと。読者が読みにくいと思われる文字に対して、補足する意味合いや、異なる読み方を示すために使われる。ルビの大きさは、ルビがふられる文字(=親文字)に対して2分の1程度が標準とされている。ただし、全体のバランスをみて、小さめのルビを選択することもある。あくまでも視覚的にみて判断する。ルビの付け方には、文中の漢字すべてにつける総ルビと、一部の漢字のみに付けるバラルビがある。また、バラルビでは選択したすべての語句に付ける場合と、初出の語句のみにルビを付ける場合がある。
ルビの大きさ
ルビの位置
モノルビとグループルビ
3文字以上の処理例
個性的な書体と
世界観を表現する組版
一般的には読みやすさを追求することが基本となるが、あえて、標準から外したデザインの書体を使うことにより、文章が持つストーリーをより個性豊かに組版に反映させる方法もある。各社の書体見本帳などを見ると、一口に明朝体と言っても、さまざまなデザインのあることがわかる。表現したいものの内容、意味、時代、イメージなどを深く理解した上で、その特徴にあった書体を選ぶことが必要。左は弊社が担当した本文組版。書籍のイメージを考え、書体を選択している。
本文 : A-OTF 秀英明朝 L (モリサワ) 14pt 行送り25pt
小見出し : A-OTF 秀英明朝 B(モリサワ)26pt
キャプション : A-OTF ゴシックMB101ProR11pt
編集:吉田秀次
デザイン:漆崎勝也
企画・発行・印刷:朝日メディアインターナショナル株式会社
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